子育て期に活躍できるまち、たかさき

総務省が行う「ふるさとテレワーク推進のための実証事業」において、関東で唯一の実証地域として採択された高崎市の「タカサキチ」を運営する都丸氏を訪問した。高崎の基地=タカサキチ。そのチャーミング(?)なネーミングの通り、中にいる人たちの空気はとてもゆるい。このタカサキチは、高崎市の空き家助成金を活用して一戸建てをリノベーションして作ったとのこと。2時間ばかりの時間であったが、カフェのような居心地の良い空間で、ついつい取材である事を忘れてしまうほど、くつろぎながらのインタビューであった。

都丸一昭(35歳)

タカサキチって家みたいな、カフェみたいな、何だか面白い空間ですね。タカサキチって、何をするための場所なんですか?

タカサキチは、簡単に言うと、一般社団法人ママプロぐんまが運営するサロンで、ママさんの活躍を支援するためのサロンですね。仕事に復職したいママさん、自分の持っているスキルを活かしたいママさんなんかがここに相談に来たりしますね。あとは、テレワークでママさんの活躍の機会を創り出して、テレワークの業務をここでサポート推進するような業務も行っております。

待ってくださいね。テレワークって何ですか?テレアポみたいな仕事をするんですか?

テレワークっていうのはですね、電話は関係ないんです。笑 テレ(=離れた場所で)ワーク(=働く)という意味で、遠隔で業務をできる仕組みをこちらで作ったりサポートしたりしてます。あそこに大きいモニター画面があると思いますが、あれを使って、テレビ会議をして、離れた場所に居ながらでもコミュニケーションを取りながら仕事を進められるようにしています。

では画面さえあれば誰でもテレワークができちゃうって事ですね?

そういう訳でもないんですよね。テレワークっていうのは、仕事を発注したいお店や会社と、働きたい方がまず居て、その両者が離れた場所にいても仕事を進められるようにする働き方なのですが、それを行うためには、まずお店や会社が、働きたい人に対して、どんな業務をお願いしたいのか、をハッキリさせる必要がありますね。

漠然と「これやっといてー」っていうわけにはいかない訳ですね。

tomaru2そうですね。指示の内容が不明確であればあるほど、のちのち方向修正のためのコミュニケーションが必要になってきます。しかし、ママさん達は、子育てをしながら働くので、時間の融通がなかなか利かないですし、急にこどもが熱が出たりすることもありますので、イレギュラーな事もたくさん起きてきます。その上で、円滑に業務を進められるようにしなければいけませんので、最初の時点で、何を、どのように、どのくらい、いつまでに、やればいいのかを明確にして、お店や会社からテレワーカーさんに作業を依頼する必要があります。実際、同じオフィスで仕事をしていても、「これやっといてー」という指示をするよりも、最初の時点で業務分担をハッキリさせておいた方が効率もいいんですけどね。

指示を出す側にとっても、指示を出すのって結構な労力が掛かりますよね。指示する内容を明確にするために、それだけで頭使うというか。

そうですよね。そこで、うちのスタッフが業務内容の整理をするためにプロジェクトのディレクターとして入ったりもします。

なるほど、それはお店や会社がテレワークを導入しやすくなる要因になりますね。実際にテレワークを推進してみて、どんな大変な事がありましたか?

子育てを最優先にしたテレワークを推進していますので、「熱が出ました。」「出産予定日が変わりました。」となれば、こちらが責任を持って穴埋め要因をアテンドしなければいけません。幸いにも、優秀なテレワーカーさんが35人ほど今集まってくれているので、住んでる場所は市内から県外国外までバラバラですが、何が起きても大丈夫な体制は作れています。また、イレギュラーな事が起きても大丈夫なよう、プロジェクトを始める一番最初の段階で、納期やクオリティをある程度こちらでコントロールできるだけの段取りを組めるよう綿密にクライアントさんと打合せをしています。

バックアップ体制として、ママさんテレワーカーさん達とのネットワークづくりは重要なんですね。都丸さんのところでサポートできるテレワーカーさんや会社の数にも限界があるとは思いますが、もっとテレワークを導入してくれる会社が増えれば、例えば、都内に住んで都内の会社に勤めている方が、仕事は東京の会社を辞めずに、暮らしは都内よりも断然暮らしやすい高崎に住む、なんて事も実現できるかもしれませんね。

そう思いますよね。実は、今そういった方がこのタカサキチで働いてるんです!東京で働いていた会社に、テレワークという働き方を認めて頂き、都内の会社の仕事をここでやっています。

え!!そうなんですね!!深夜の通販番組みたいなやり取りさせてしまいましたね!!笑

tomaru3都内で子育てをしたくないという方は本当に多いですからね。ただ、仕事がネックで移住できない、という方は多く居ます。そのような方々にとってテレワークが高崎に移住する要因になったらいいなぁと思います。それには、お店や企業がテレワークという働き方を認知・理解し、導入してくれる事が必要ですね。それから、テレワーカーの拠点整備に、行政がもっと力を入れてくれれば、テレワーカーの受け皿は広げられますね。タカサキチというスペースだけでは限界がありますからね。

実際に、高崎に移住してきたママさん達と接する機会も多いかと思いますが、高崎って、本当に子育てしやすいまちなんですか?

めっちゃ子育てしやすいっすよ。この前、「保育園落ちた日本死ね!!!」っていうブログがニュースなんかでも結構取り上げられてたでしょ?高崎に来ちゃえばいいんですよ。高崎は待機児童ゼロですしね。あと、高崎って、参加できるまちじゃないですか。高崎って、みんなで何かをやろうっていう空気がありますよね。僕らも色んなママさん・パパさんを巻き込んだ活動していますけど、みんな繋がっちゃいますもんね。こども連れてまちなかにでも出たら大体知り合いと会いますし。みんな居場所と出番が欲しいんですよね。そのための最初のキッカケづくりを僕らももっと仕掛けていきたいなぁと思っています。

確かに、高崎の人は地元愛強いですけど、外から来た人に対してウェルカムな雰囲気もありますもんね。ちなみに都丸さんがやってるママさん・パパさんを巻き込んだ活動ってどんな活動なんですか?

asobibaあそびばプロジェクトといって、山名八幡宮の神社の境内を使って、休日に親子一緒にあそべる企画をしています。流しソーメンとか、焼き芋とか、味噌造りとかをやってますね。あまりガチガチにルールを設けたりしないので、予定調和なことはほとんどありませんが、困った時にみんなで助け合ったり、パパがヒーローになれたりする機会にもなってます。そうやって、少しずつ出番が増えて、居場所になっていくような仕掛けを、ゆる~くつくっています。

あそびばは、僕も何度か見に行った事がありますが、みんなイキイキしてますよね。歌ったり踊ったり、大人も楽しんでますしね。大人が楽しんでるところ見て、こどもも楽しんでますよね。

そうですね。最初のまちに参加するキッカケって、本当、そのくらいのゆるさがあっていいと思うんですよ。
地域貢献!とか、○○を救おう!とかじゃなくて、なるべくハードルの低いキッカケを作っていきたいなぁと意識しています。

最後に、高崎の中で色んな活動されてる都丸さんですが、高崎をどんなまちにしたいですか?

子育て期に活躍できる高崎市にしたいですね。それに惹かれて高崎に移住してくる子育て世帯が増えたらいいなぁと思います。

ありがとうございます!我々も、都丸さんの活動を全力で応援させて頂きます!

ゆるい語り口調でお話してくれた裏側に、強い使命感のようなものを感じた。今回は、私どもの趣旨に合わせて「子育て」「移住」という視点でお話をしてくれた都丸さんだが、普段、企業側にテレワークを推進する際などは、企業側の経済的メリットや経営的なお話もされている。ゆるいアウトプットの裏には、それを支えている様々な角度からのロジックがあり、ロジックを構成させるために必要な様々な失敗や苦労があったのだという事も分かった。

かかあ殿下の群馬県は、古くから女性の活躍に寛容である。都丸さんが言うように、子育てを最優先しながらも、社会で活躍するママさんを高崎市内で創出するという事は、高崎市が辿ってきた歴史から見ても自然な流れである。県外に居る子育て世帯に、もっと高崎の良さを知ってもらいたいなぁと改めて感じたインタビューであった。

About the author

公益社団法人高崎青年会議所 広域政策実践委員会委員長。大学生時代に起業。シェアハウス事業を立ち上げ、シェアハウス業界の草分け的存在に。その後、WEB制作会社を立ち上げ中小企業の売上向上に取り組む。2013年より地元群馬県に戻り地域活動を開始。2015年統一地方選挙にて初当選を果たし、現在高崎市議会議員の一期目。

Related

JOIN THE DISCUSSION